退去費用を全額借主に負担させる特約は認められません

特約の有効性

賃貸借契約では、強行法規に反しないものであれば、特約を設けることは契約自由の原則から認められています。

 

ただし通常損耗・経年劣化を排除する特約が有効になるためには一定の要件が必要になります。

 

しかしほとんどの契約書では要件を満たしてなく特約は認められません

 

私が確認した契約書の特約で要件が認められるものは今まで数件しかありませんでした

ガイドラインには

経年変化や通常損耗に対する修繕業務等を賃借人に負担させる特約は、賃借人に法律上、社会通念上の義務とは別個の新たな義務を課すことになるため、次の要件を満たすことが必要と記載されています。

 

 ① 特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること

② 賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて 認識していること

③ 賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること

 

要件のうち「客観的・合理的な理由があること」の要件が満たされず特約が認められない可能性があります。

 

客観性とは、負担範囲が契約書などにより・具体的に明示されていることが客観性になります。

 

合理的とは家賃を周辺相場に比較して明らかに安価に設定する代わりに、こうした義務を賃借人に課すような場合等が考えられますが限定的なものと考えられておりますが客観性や合理的がなく多くの契約書では特約が認められません

 


裁判所では

最高裁判所第 2 小法廷判決 平成17 年 12 月16

 

通常損耗を排除する合意が成立したといえるためには、賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか、仮に賃貸借契約書では明らかでない場合には、賃貸人が口頭により説明し、賃借人がその旨を明確に認識し、それを合意の内容としたものと認められるなど、その旨の特約が明確に合意されていることが必要であると述べられていますが契約書に具体的に記載されていることはほとんどありません。